渡邊研究室では、蛍光や燐光を用いた様々な発光物質を応用した材料の設計を行なっています。熱履歴により発光のOn-Off切り替えが可能な蛍光材料や、本来大気中では観測されないと云われていた有機材料による長寿命燐光発光を観測可能な系が開発されています。更に、他では見られない機能を持った独自の発光材料設計を考えています。

Case1:温度によって発光色が変わる有機燐光材料
 今まで、有機材料の燐光発光の大敵とされてきた熱(温度)を逆に利用することで、新しい発光機能を持った「有機燐光材料の創製を試みました。現在は、現象の詳細や様々な燐光色の組み合わせを研究しています。本材料の「温度の可視化(温度変化が燐光色変化として目に見える)」という特徴を活かして、低温領域から適用可能な温度センサー等への応用を検討しております。Adv. Opt. Mater.?1(4) , 283-288, (2013)

Case2:有機燐光材料発光色時空間制御
 有機燐光材料は、発光色素と発光性質を守るマトリックスから構成されています。色素、マトリックスとして物性値の異なるものを利用することで、発光色が時間変化する材料や加熱プロセスを用いる事で場所によって異なる色の発光を伴う材料を設計しました。現在は、この2つを自由に制御する方法を探索しています。(図は本研究で創製された場所によって燐光の色が異なる材料。)

Case3:光で屈折率の変わる材料
 分子は光を照射する事により、基底状態から励起状態になります。基底状態と励起状態は光学的には異なる物質として扱うことができ、屈折率も異なります。しかし、一般的に励起状態になった分子はすぐに基底状態に戻ってしまうため、光を照射しても物質は全体的に基底状態の屈折率と殆ど変わらない値になります。
 渡邊研究室では、分子の励起状態寿命を長くすることで物質の励起状態分子の寄与を大きくし、光による屈折率変化を起こす材料の作製を目指しています。具体的には、新架橋剤の合成、オリゴマーの剛直性、ゲルを構成するモノマーの条件を最適化し、さらなる高効率なゲルアクチュエーターを開発するべく、研究しております。