フェルガナ州ヨズヨボン市での催青は5箇所(コトルトル、チョリグリストン、コラテパ、イシテルホン、コラソコル)の催青所で行われた。
各催青は概ね日干しレンガを使用した建物で、広さは9㎡位、壁の厚さは30センチ、開口部は出入口と窓一箇所、開口面積は小さく外温の影響を受けない構造であった。
保温はガスを燃料にしたペチカで、保湿は床に水をまいていた。室内温度は25℃から27℃、湿度は60%から70%位であった。照明は電球(40w位)1つだけの明るさだった。光のサイクルで卵の発生を揃える効果等は考えていないようだ。
催青容器は蚕座紙を切り約30センチ角の箱に蚕卵を約29グラム入れ、初日に発生した蟻蚕はそのままにして翌日発生した蟻蚕と共に蟻量を計って飼育農家に配蚕していた。
3日目に発生した蟻蚕は他の容器で発生した蟻蚕と合わせて計り配蚕に使用した。
又、4日目に発生した蟻蚕は捨てていた。
卵の発生歩合は問題にしていない様子だった。蟻蚕の計測も正確ではなく、切った桑の葉で集めた蟻蚕を計り、少し多めに計って飼育農家に配蚕していた。
ヨズヨボン市の6箇所の地区で1,370gを掃き立て、52軒の飼育農家で飼育した。
基本的には稚蚕共同飼育はしていないが、稀に近くの親戚の2~3農家分を共同飼育している農家があった。配蚕された蟻蚕は事前に用意された居室を飼育室にして腰の高さに組んだ棚の上に蚕座紙を広げ飼育していた。
飼育経験がかなりあるので、基本的な飼育方法は出来ている。しかし、状況変化に対応はしなく、ただ飼育している様子で今までの習慣で質より量と言う考えが優先していた。
全飼育農家が稚蚕期、壮蚕期共、飼育密度が高く桑不足になっている状況だった。 再度蚕座を広げるように指導したが、各農家の飼育面積よりも掃き立て量が多いため、問題が発生したと考えられる。
日本では早く熟蚕になった蚕は手拾いしてから一斉上族をするが、ヨズヨボン市の飼育家では手拾いは 行わず、熟蚕が2割位出ると蚕座の上に箒草、又は綿花の収穫後の枝をのせ、蚕座の側面及び、箒草の 上にもすっぽり布をかけ、中に青い桑葉を残したまま上族をしていた。 収繭は化蛹したか確認しないで早めに収繭をしていた。又、全部手作業で家族、近所の人たち子供を動員して繭を箒草より取り、同時に毛羽も手で取っていた。繭についた毛羽は丁寧に取らず、かなり残していた。 選繭は飼育農家が収繭する時、重要な作業であるが、薄皮繭、玉繭等しか選繭しておらず汚染繭等は選繭しないで出荷していた。
飼育農家が完全化蛹するまで管理をしてなく、早く収繭し出荷している。繭の繭重、繭層重を調べる為に 繭を切開するが、かなり化蛹してない繭があった。
上族後の温度管理と化蛹までの日数を指導しなくては ならない。選繭が殆どしていなくても集繭所では繭を引き取っていたが、今まで、繭質より収繭量を重要と していた習慣が残っているため繭質が向上しない最大の原因と考えられる。
各飼育農家が集繭所に繭を出荷し、集繭所職員と持参した農家立会いの元、看貫をして繭は乾繭にまわされる。集繭所に集められ乾繭した繭はフェルガナ州5箇所の製糸会社に販売し、その代金で飼育農家へ支払いをする。
飼育地区別の繭重、繭層重、繭層歩合の平均を表にまとめ、日本産蚕種と比較する為に同地区で飼育したウズベキスタン産蚕種の結果も記載した。日本での同品種の平均飼育結果より繭重が軽く、繭の大きさも小さかった。その最大の原因は厚飼いの為であると考えられる。
現在ウズベキスタンでは生糸の需要が多く生糸が不足している。そのためウズベキスタン政府は繭の増産を奨励しており春蚕期だけでなく、秋蚕期での飼育が必要と考えている。そこでヨズヨボン市で秋の養蚕飼育を行なうことにしたが、餌である桑に害虫が発生したため、ヨズヨボン市では飼育できない状況になった。急遽、他の地域で飼育を開始したが、桑の害虫はフェルガナ全土に広がっており、餌である桑が少なかった。また、綿花の落葉剤配布時期と重なった為、薬剤が桑葉に付着しているのが気付かず給桑し、5令期2日目に薬害の症状で八割位の死蚕が発生してしまった。以上の結果から,秋は養蚕には困難な時期であることがあららためてわかった。
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